日隠が集落を出れないのは、長老の一人孫だから。
血を継いでる母は亡くなって、現長老である祖母はもう年。日隠は一人っ子。
族長の血が絶えるということは、族が滅びると同意義。
長の血というだけあって多少は長生きだけど、それが外の世界へ出ていいということではない。
イコール軟禁状態。
だけど、それなのに日隠が表立って動ける理由は簡単なことで、
ようするに影武者であるから。
日隠は一人っ子だが、日隠の母は二人姉妹の姉で、
妹は健在で年頃になる娘が一人。
族のしきたり通りに行くなら、断然女である日隠の従妹が次期長になる筈であるが、
そちらも一人っ子のため血が途切れるのを防ぐには隠すのが最善の策。
そして日隠の鼓舞による勝利確立の上昇の力は本物であるため、
日隠を表に立たせ、もし日隠が討たれたとしても族の血は途切れないという仕組み。
それを知らされてはいないものの日隠自身は薄々知っている。
族の中では日隠をこのまま族長にしようとする派閥と
日隠の従妹を族長にしようとする派閥に分かれていて、
二人がそれなりの年齢になった最近では派閥間の亀裂が大きくなってきた。
日隠は異端な自分を育ててくれた族のためなら、
影武者のままであっても集落を追い出されても、どちらでもいいと随分前から決意を固めている。
また、自分の従妹を危険な目に合わせたくないという気持ちもある。
全ての人が好きだから、自分が犠牲になる精神の持ち主。
日隠の名前は「日を隠してしまうほどの大成になれ」というわけではなく、「日を匿う」
つまり、生まれた時から影武者としての存在。
日隠の母の妹が育む命を隠すための存在として生かされてきたと言っても過言ではない。
それが日隠。
異端の子の行方。